土地や建物などの不動産には、毎年固定資産税と都市計画税を納付することが、法律で定められています。
この、固定資産税の支払い義務者(納税者)はもちろん所有者となりますが、実は、売却物件の納税に絡んだトラブルが起こりやすいので、注意しておかなければなりません。
〇売却時のトラブルになる原因
単純に、「その不動産の所有者が払う」というきまりだけを見れば、大したトラブルになりそうもありませんね。しかし、問題のもとは、固定資産税が1月1日時点の所有者に対して課税されることにあります。
●売却時には固定資産税のことが眼中にない
不動産の売買を、元旦早々に取り付けて所有権を移転する人はまずいないでしょう。(縁起担ぎで稀にいるかもしれませんが、年末年始は不動産会社も休業でしょう)
ましてや、固定資産税をきっちり払うために、大みそかに売買契約する人がいないだろうと想像するのも同じ理由から。
第一、税金の納付があるからと言って契約日に神経を注ぐより、「その物件を早く手放して代金を清算してほしい」「工事の着工を急ぎたい」という双方の事情が理由になるのが妥当です。
そして売却時には、住宅や土地がいったいいくらで売れるのか?というほうに注意が行きがちです。
●売って無くなった不動産の納付書が売主に
年明けから春先の売却時には、気にも留めていなかった固定資産税の存在。ところが、忘れたころに納付書がやってきます。
不動産は売って自分の名義ではないのに、固定資産税の起算日が1月1日だから…という理由だけで、元の持ち主のところに納付書は届くのです。
年が明けてほんのわずかな時間しか経っていなかったとしても、例外なく納付書は従前の持ち主に届きます。
●固定資産税を完納した後に売却
4月に届いた固定資産税納付書の通り、税金を納めてしまって年内に不動産を売却。これもよくあるパターンです。
年末までの数か月は、自分の不動産じゃなくなっているのに、先に税金を納めてしまって何だか損した気分になりますね。
〇売却時までの税金を清算してトラブルを防ごう
売主に届く固定資産税納付書は、一年分の税額が記載されています。期の途中で所有者が変わっても、役所はわざわざ新しい所有者に納付書を送ったりしません。
いやおうなしに、一年分の税金は元の所有者が支払うことになりますので、売却時に所有期間開始からの税金分を清算するという内容を、契約書に盛り込めばいいのです。
要は、売却金額に相当の固定資産税額を上乗せするということです。
●法律上は途中清算の定めなし
固定資産税納付者が期の途中で変わることについて、法律の定めは別段ありません。
売主と買主の双方が、納得のいく契約内容に収まればいいですが、買主が「固定資産税の負担はしない」と言っても、それに法的拘束力はないのです。
ただ、通例としては、1月1日時点、または固定資産税額の算定される4月1日時点から、残り税額を計算します。そして、売却金額にプラスして支払い、納税は元の持ち主がする、というパターンが多いです。
売却時と納税期限にはタイムラグがあるので、売主としては「いまさら感」が強いでしょうが、実際に損をしないように、契約時にはきちんと見合う税金の負担をお願いしましょう。
【著 者 長 岡 利 和】