大切な家族がなくなり、その家族が資産を持っていた場合、財産の相続手続きを行うことになります。資産が多く、分割相続の価値に応じて、相続税が課税されますが、その仕組みは複雑です。
近年問題となっているのは、土地建物のような不動産の分割相続と相続税の支払いです。相続税は原則現金納付なので、不動産を相続した場合は、「ものをもらってお金で納税する」ことになります。
〇不動産の資産分割で家を手放す?
平成27年度から、相続税の基礎控除額が引き下げられました。従来は基礎控除額が5000万円プラス1000万円×法定相続人数であったのに対して、改正後は3000万円プラス600万円×法定相続人数に変更されています。
単純に想像して、新築物件であれば、都心部のマンションや東京近郊(郊外地)の土地建物、一戸建てにかかる費用は5000~1億円の価格帯ゾーンに当てはまります。
また、中古物件でも、築浅のマンションでファミリー向け相当の広さがあれば、3000万円はくだらないでしょう。
●相続税の基礎控除をシミュレート
数千万円の住宅や不動産の相続が、まだまだ現実的ではない人もいるでしょうが、親の持ち家や土地など資産があった場合、資産譲渡を受ける立場として想像してみてください。
ご自身が例えば二人兄妹で、親の持つ資産を相続するとします。基礎控除額の式に当てはめると、3年前までは課税価格7000万円までは相続税が発生しなかったものが、改正後から4200万円を超えた時点で相続税を支払うことになるというわけです。
●配偶者控除を利用した相続税対策の効果
親がマイホームを建てた時世にもよりますが、住宅にかかる相続税対策として「小規模宅地等の評価減特例」の厳格化がかかわってきます。
被相続人の親から実家を相続するとき、配偶者と子供が自宅敷地を共有していた場合には、その敷地の一部分でも配偶者が相続していると、同居していない子供が相続した敷地分に対しても評価額が8割カットされていました。
しかし、現在は子供が別居している場合の子供相続分について、評価額8割カットの特例は使えないケースが出てきています。
実家の相続問題が起こったときに、トラブルとなる代表例が「不動産の分割」と「相続税の支払い」です。法定相続に則って遺産分割した時に、自分がどのくらいの相続税を支払うことになるのか、また不動産の課税評価額はいくらくらいになっているか…など、建物の償却具合や土地の換価価値も注視しておかねばなりません。
現金で相続税が払えなければ、不動産を処分するという選択も当然に出てきます。評価額と売却価格の差や、贈与税の特例活用など、現状でどの方法がベストなのかをしっかり親族で話し合う機会を設けておきましょう。
【著 者 長 岡 利 和】