相続は、その来るべきと気にならないと、現実的に考えられないという人もいることでしょう。中には、「家族の死別を生前から話に出すのは不謹慎だ」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、相続の話は来るべき時に備えて、あらかじめ心づもりを親族で共有しておくことをお勧めします。それまではとても仲の良かった肉親同士が、相続を機会に離縁してしまうという話も少なくありません。
相続財産と、それまでに受けた被相続人からの贈与、援助など、相続人の数が多ければ多いほど難航して、ケンカや仲たがいが終生、話の後を引きます。
皆が可能な限り納得のいく話し合いをすすめ、被相続人が機会をみて意思表示をしておくことが大切です。
〇子供の持ち家が相続税を増税させるかも?
子供が独立して、結婚して所帯を持ち、さらに持ち家を建てる…これは、親にとって子供の成長と成功を感じる、人生の中の一大イベントにも思えます。
ただ、相続税の試算をするとなると話は別です。子供が独立して同居していない期間によっては、実家の相続人となるか否かで、増税の可能性を生みます。
〇小規模宅地等の評価減特例とは
遺産のうち、自宅の敷地や事業に使われていた宅地など、一定の要件を満たす宅地の場合には評価額の一定割合を減額するという特例があります。これが「小規模宅地等の評価減特例」です。
利用している状況によって、減額割合は変わりますが、キーポイントとなる面積は400平米(特定事業用宅地)および、330平米(特定居住用宅地等)以内。評価額の50~80パーセントが減額される可能性がありますので、要件と照らし合わせて、相続時評価の参考にするといいでしょう。
〇主な特例の要件
この「小規模宅地等の評価減の特例」では、被相続人と相続人、配偶者、生計を一にする親族など、適用される宅地の4種類(商店や工場地・同族会社の土地・自宅の土地・アパートや駐車場の土地)に応じて、要件が細分化されています。
一般的に見て、大きくかかわりがあるのは、特定居住用宅地等(自宅の土地)でしょう。
〇特例を利用して増税を防ぐには
被相続人の自宅は、配偶者か同居している親族が相続する場合に、この特例を適用させることができます。実家に住んでいる家族がそのまま引き継ぐときは、大きな問題にはなりません。
●実家に被相続人が一人で住んでいた場合は
もし、配偶者や同居親族がいなかった場合、わかりやすく言えば、子供がすでに独立して、親のどちらかが実家に一人で住んでいた場合を指しますが、これは特に注意しなければなりません。
3年以内に持ち家に住んだことが無い親族が実家を相続した場合にのみ、この評価減特例を受けることができることになっているのです。
ということは、相続事由以前の3年の間に子供が家を所有して、そこに住んでいれば、子供が実家を相続してもこの特例が受けられませんので、評価額を元に相続税が計算されるため、持ち家がない場合と比べて大幅に増税します。
●実家の相続人は不動産購入を慎重に
いずれ、実家を相続する予定がある人は、相続後に実家に住まうことを前向きに考えて、安易にマイホームを購入しないほうがいいかもしれません。
相続人が自己所有する家と、実家の、両方を管理するのは簡単ではなくお金もかかります。また相続税も増税対象になりますので、やはり家と土地の継承者を誰にするかは、あらかじめ生前に方向性を決めておくほうが得策でしょう。
【著 者 長 岡 利 和】