相続税の基礎控除額が、平成27年の税制改正から引き下げられました。
これまでは、土地建物のほかに、株式や事業など一定の財産を所有している、いわゆる「お金持ち」の人にしか縁がなさそうに感じられていた相続税。家政婦紹介所から出むく家政婦が、亡くなった被相続人の財産分与を巡って、お金持ち一家の野望と欲に目をくらます様子を暴くドラマでも、よく相続関係がとりあげられていたものです。
〇泥沼相続と相続放棄 相続税はどうなる?
こんなドラマの中に一人は出てくる「心優しいピュアな人」は、「良くしてくれた亡人から財産をもらうつもりはない!」などと、相続放棄を申し出る、というシーンもありがちですね。
決まってこんな人はクライマックスで、何かしらの巨額な富を得るものです。相続放棄したのに、ハッピーエンドで終わるような財産をもらえるのか。相続に関する取扱いはどうなっているのか?疑問に感じるひともいるのではないでしょうか。
〇相続関係者と相続放棄
相続対象者は、被相続人が生きている間に「いりません」ということはできません。生前放棄を認めていない理由は、悪しき心の持ち主によって、「お前が相続放棄しなければ…」と、よからぬ不正な相続を起こさせないためです。
脅迫や圧力をかけて、本来あるべき相続の形が壊れてしまうことを禁じるという目的のため、生前放棄は効力を持たないこととなっています。
●相続事由発生後の相続放棄
被相続人から、相続財産の分与を受ける事由が起こったら、それを知ってから3か月以内に「相続しません」と家庭裁判所に届け出すればいいのです。
手順や詳細は、ここでは省略しますが、気を付けねばならないのは、「相続にかかわる行為や処分をしたあとに放棄できない」ということ。
一部を相続したなら、その後に放棄することはできません。それが、プラスの財産だけではなく、借金などの負債もおなじです。
〇相続放棄した人の相続税払いはあるか
相続を放棄した人から、相続税を徴収することは原則あり得ません。相続していないのですから。
ちなみに、放棄が認められれば、その人は「初めから相続する対象ではなかった」とみなされます。
ただ、代襲相続や、遺贈など、細かい点には注意しなければなりませんし、専門的知識が必要になることが多くあります。
相続税を支払う必要がないと思っていたのに、自分の意思とは関係ないところで納税義務が発生していた、というケースもあります。
被相続人が生きているうちに対象財産や負債を明らかにし、トラブルが起こらないように生前から話し合っておくこと。後にもめ事を起こさない準備は、これにつきます。
【著 者 長 岡 利 和】