核家族がもはや当たり前にも感じる現代の生活のなかで、親子が一緒に住まう環境を作ることは、老後の不安解消に役立ちます。安心して生活を送るだけでなく、生活の拠点となる住宅を増改築、または新築するときに、融資審査が通過しやすくなるという利点や、税制的なメリットを考えて、二世帯住宅を選ぶ人も増えているようです。
一見すると、いいことばかりのような気がしなくもないですが、二世帯住宅を建てたがゆえに起こるトラブルもあります。
その時々で、安直に判断すると、のちに家族関係を悪くしてしまう原因になりかねません。
〇間取りや返済をとりあえず共有するのはNG
親世帯と子世帯が同居することになる二世帯住宅。入り口やキッチン、トイレなど共有するか別にするか。また階段や通路など、共用スペースの取り扱いなど、一つの住宅のなかで持ち分をどのように判断するかを考えるのは、とても面倒に感じるでしょう。
融資や登記をしなければならない場面になって「とりあえずこんな感じで…」と安易に持ち分を決めてしまうのはトラブルの元です。
●兄弟がいたら要注意 トラブルの具体例
その時の疑問を解消しようと、何も考えずに持ち分配分してしまうと、将来に相続をするときになって必ずと言っていいほどトラブルになります。
二世帯住宅に、住まう以外の兄妹がいるなら、この点を最も重要視しなければいけません。
同居している子ども世帯は、自分の財産に一体化している二世帯住宅。しかし、これ以外の兄妹にとって、親の世帯部分が唯一の相続財産だった場合、どのように相続財産を分けて分配するのか?場合によっては、相続財産が兄妹に取られてしまうのではないかと、疑心暗鬼になり、親子・兄妹関係がぎくしゃくしてしまいます。
●二世帯住宅プラス土地の分与もトラブルに
親の財産として所有していた土地の上に、子どもの一人が二世帯住宅を建てたとします。相続事由がおこり、子どもが土地を相続することになった場合を考えてみましょう。
二世帯住宅に住む子どもは、家を守れる安心感があるかもしれませんが、分与した土地の持ち主となった他の子どもにとっては、兄弟が住んでいるうえに建物もある、利用価値がない土地を相続することになるのです。
仮に、土地を処分して現金化する意向が有れば、二世帯住宅に住まう子が、兄妹から土地を購入する、または他人に土地のすべてを売却して現金化し、分割をするという方法をとることになります。
〇相続財産は着手前にきちんと話し合いを
被相続人が持つ財産をどのように分割するか、という相続トラブルは以前から問題になっていましたが、親と子が共有する財産を新たに持つ場合は、これまで以上の注意を払わねばなりません。
目先の安心感を得るために二世帯住宅を建てたせいで、子どもや配偶者が終生、仲たがいをしながら人生を過ごすもとにならないように、今と将来を考えた住宅を、きちんと協議しておきましょう。