生前から親の財産を相続する話なんて縁起でもない!という発想は、もはや一昔前の考え。きちんと相続について、話をしておくほうがいいという声を各所で聞く機会も多くなりました。
これまでは、被相続人が亡くなった後に家のいたるところを探し回れば、財産に関する書類や証明を見つけられました。しかし今は、まさしくインターネット移行完了期です。
相続財産がどれくらいあるか、その所在と価値の把握をあらかじめしておかねば、親がなくなったことがきっかけで、親族や家族と縁を断つことになりかねません。
穏便に話を粛々と進め、しかも相続税をできるだけ少なくする方法を考えておきましょう。
○なぜ生前に相続税の話が必要か
株券が電子化されて、保険手続きから必要時の申請、更新手続きまでがメールで完了してしまう時代です。銀行の預金管理や口座開設も、ネットバンキングを利用すれば通帳の記帳代わりに取引履歴がデータ処理されて、ネット閲覧できてしまいます。
土地や建物の権利証は現段階では電子化されていませんが、登記の申請は既に有資格者が電子手続きで完了させることができるところまできています。
ネット社会で手続きや管理が完了するものが増えると、その開設や手続きをするためのIDやパスワードを知らなければ本人以外誰も操作できなくなります。
被相続人が内緒で預貯金していた口座や、資産運用のための取引口座が誰も知らないところで開設されていたら…その存在も確認方法も知らないまま、相続財産は闇の中となってしまいます。
○個人情報と相続財産の確認
インターネットの普及と個人情報保護の観点から、被相続人しか行えない手続きや申請が増えました。保険や預貯金、借金に関する情報は、以前なら「家族です」といえば教えてくれたものです。ただ、夫婦や家族にも秘密と個人情報保護が優先します。
残された家族ではできない手続きが多くなっているのです。
○孫を含めた財産管理で相続税を少なくする
親にとって子どもに相続財産を分与することは、かわいい孫に贈与をするのと変わらない。という視点を持ってみましょう。
孫にとって子どもは親であり、相続税の課税が重くのしかかれば、経済的にみて孫にかわいそうな思いをさせるかもしれません。
それならいっそ、孫に贈与すれば相続税は掛かりませんし、孫に財産を引き継がせることができます。
相続税逃れのためとみなされる子どもへの贈与と異なり、被相続人が生存していれば孫は相続人となりません(代襲相続など特別の事情を除く)。
贈与税と相続税の税率を比べて、相続税を支払うほうが税額を少なくすることができる場合もあります。基礎控除を組み入れて毎年贈与をしながら、相続税を少なくするという方法もあります。
所有財産の内容によって、税金納付を少なくすることができる方法も違います。財産分与で将来揉め事になる前に、専門家(税理士や司法書士、弁護士)に相談してみると良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】