縁起の良くない話は、どうしても先送りしたくなるものです。例えば、病気の家族について話をするときや、両親のどちらかが亡くなったときのことなど、「今から事態が悪くなる話」を前向きに考えられない人もいるかもしれません。
ただ、心積もりをしておいたほうが良いということ、先延ばしにしてもいつかその時は来るということは、誰もが感じているでしょう。
そして、家や土地を所有する親の相続遺産をどうするか。マイナスのイメージだけで話をするのではなく、相続税をできるだけおさえるという目的を明確にしておきましょう。
家族みんなが少しでも楽に、得になる策を、早い段階で講じておけば、将来に起こるかもしれないトラブルを防止に役立ちます。
○実家の一時相続と二次相続 税額の違い
相続財産のうち、最もトラブルになりやすいのが実家(建物不動産)です。父(母)親が他界して母(父・配偶者)が相続することを一時相続といいますが、このときは税の基礎控除が大きいので相続税がかからない、または税負担が軽く済むケースが多いです。
問題になるのは、子ども世代だけでする二次相続の場合です。配偶者軽減措置がなくなり、基礎控除額がへるので、一時相続のときよりも課税が重くなります。
○相続で分けられない実家をどうするか
土地は分筆ができますが、家(建物)は、現実的にそのものを分配することができない、という点が悩みの元です。
そのまま家を相続人の誰かが継承する(現物分割)・売却して現金を分ける(換価分割)・それぞれの相続財産価値に合うように、引き受けた不動産との差額を代償する(代償分割)という3つの方法から、皆が協議して選ぶことになるでしょう。
○「誰が実家を引き継ぐか」で相続税の増減も
被相続人が他界して、相続人が財産の分与を受ける際に、実家をそのまま居所として使う目的があるかどうかが大きなポイントです。
もし実家を誰かが相続するなら、相続対象者のうち「土地の相続は同居していた家族が」引き受けると相続税をおさえられる可能性が高まります。
●小規模宅地等の特例で相続税を
小規模宅地等の特例とは、「330平方メートルまでの宅地評価額のうち8割を減額して相続税額の算定を行う」ものです。
配偶者は条件無く適用されますが、子どもが相続する場合には、いくつかのチェックポイントがあります。
「子どもが親と同居していたこと」、または「別居していたが持ち家がないこと」。この条件に合致すれば、特例を受けて相続税をおさえることができます。
相続税の改正によって、課税対象者が増加しました。適用される軽減特例もあるので、相続税を軽減するという目的をかなえるためにも、早めに考えや思いを確認して、具体的なイメージを相続人同士が共有しておくと良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】