あらゆる金融商品は、その時代の景気や消費動向をあらわすひとつの指標となります。不景気といわれて20年が過ぎようとしていますが、もはや今の状態が日本にとって当たり前という感覚になりつつあります。
景気を刺激して、経済活動を活発にする。日本の情勢は一般家庭にさほど影響しないだろうと思われがちですが、とても近いところで大きく関わっているのです。
○景気を刺激するための政策 マイナス金利
住宅ローンの金利が低い今のような状態が、これからどれだけ続くのか。消費税の増税と合わせて、これから住宅を購入しようかと考えている人には気になるところでしょう。
●マイナス金利とはどういうこと?
各種のローンを取り扱う(金融)機関にとっては、それぞれの金利が高いほうが好ましいことは想像がつくでしょう。
マイナス金利とは、日本銀行(国)がそれぞれの金融機関に対して融資をする際に、金利を上積みするのではなく、0パーセント以下に設定すること。これによって、日本銀行に金融機関がお金を預け入れると損をする構図を作っているのです。
日本銀行に預けて金融機関の預貯額を増やすのではなく、企業や個人に貸付して金利を得て、経済活動のための融資を増やすことを目的にしています。
●マイナス金利と住宅ローン引き下げの関係
日本銀行に預け入れをしてお金を蓄えるより、融資をして金利で儲けを出すしかない金融機関は、とにかくお金を貸し付ける方向にシフトしていきます。
例えば企業の設備投資や事業資金という形で、貸付を行うシーンも増えるでしょう。住宅ローンもその一環で、多くの人に貸し付けをして金利で利益を出すしかありません。
そこで、各ローン保証会社や金融機関で、顧客を得るための競争が始まります。消費者の立場にすれば、住宅ローンの金利が低ければ低いほど、返済総額が少なくて済みます。こぞって、金利の低い審査先を探すことになるのです。
このように、金利を下げて顧客を得る方法として、互いの金利を探りながら、下げ幅を見つつ繰り返していった結果、マイナス金利政策から一年半が経過し、底率を更新しつづけているのです。
○住宅ローンの借り換えにもメリットが
一度審査をしてから完済まで、一金融機関でお世話になるという住宅購入の形が、マイナス金利政策によって大きく変わったともいえます。
ゼロ金利以前に購入した世帯は、借り換えをしたほうが返済総額を減らすことができる可能性が高まりました。
ただし、借り換えをするときは、ローン残高や購入時に支払った必要経費(登記や手数料など)をトータルで考えてシミュレーションすることをお勧めします。
また、契約内容によっては借り換えや繰上げ返済ができないというケースもありますので、借り入れした金融機関に一度相談してみると良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】