親が亡くなる前に知っておきたい 相続のなぜ・なに

生前に親の相続を前向きに話しておこう、という風潮が強まりつつあります。
実際に具体的な話に及ぶケースは、そのなかでもわずかなようで、現実を受け止めてはじめて「やっておけばよかった」という話も聞きます。
なぜ、相続のことを生前に話しておくべきなのか。そして、どんなことを話し合うべきなのかを、ここで少しご紹介します。

〇相続にはリミットがある
被相続人である親が亡くなって、悲しみにふけっている間に、時間はあっという間に過ぎてしまいます。
しかし、相続税の申告や納付にはリミットがあることをご存知でしょうか。

●相続税の申告は「開始から10か月」
亡くなった親を偲んで節目の法事を行い、それまでと同じような日常に戻れるのに、数か月はかかります。心的な苦労もあるでしょう。立ち直ることも簡単ではありません。
しかし、相続税の申告期限は、それを待ってくれません。しかも、相続財産がまとまってある場合は、よくあるドラマのように、骨肉の争いが起こる可能性もあります。
もめ事は続いても、期限は待たない。ならば、先に円滑な相続が実現できるように、あらかじめ親族で話し合いを持つべきです。

●親の財産をすべて把握していないと…
最近は、インターネットで預貯金や株の管理・運用をする場面も増えてきました。親がネットバンクやネット証券を利用していた場合、その口座や残高を確認するためには、ログインしなければなりません。
ただ、本人が亡くなってしまったあとで、その情報を誰も知らない…となれば、事態は深刻です。金融機関もなかなか個人情報をスムーズに開示してくれません。申請の時間や親族確認、手続きや口座の有無がわかるまでに、申告期限が来てしまったという事態もあり得ます。

〇もめる原因のほとんどが不動産相続
金品の分与なら、互いの持ち分相続割合もわかりやすく、さほどトラブルになりません。(親族のなかで欲と欲のぶつかり合いがあれば、話は別ですが)。
しかし、不動産は正直なところ厄介です。それはなぜか。現物の形で引き継げば、権利を得る人は一人になるからです。共有名義で引き継ぐと、のちに処分をするときに、また火種がおこりかねません。
相続が問題になるとき、土地と建物以外にめぼしい資産がなければ、子どもが複数いるとその分与でおおよそもめます。

●引き継ぐ遺産の分与を堅実に
分与が多いほうが良い、と思うのは一般的に想像できます。しかし、その資産価値と相続人としての立場によっては、相続税が課税されることになります。
控除などの税制優遇も、相続人の立場によって大きく異なります。プラスの遺産だけとも限りません。ローンが残っていれば、それを引き継ぐ(負債を追う)こともあります。
なぜ、親が亡くなる前に相続の話をするか。それは「申告までの期限とトラブル回避」がおよそすべての理由といえます。
長く親族同士でもめることが無いように、生前にできるだけ具体的な相続の話をしておくべきでしょう。

【著  者   長 岡  利 和】


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