相続税は分け方次第 二次相続を見越した分与を

相続は「誰が損をする・得をする」という発想ではなく、皆が納得して「皆が損をしない」方向性で考えるのがベストです。
自分が相続することで得た財産があっても、それ以上の相続税を払うことになってしまっては、せっかく残してくれた遺産を快く思えなくなってしまいます。
また、借金などの負債も相続の対象ということを忘れてはいけません。住宅購入や継承など、不動産で揉める相続は多いです。
最小限の衝突で(できれば誰もが快諾できるほどであればいいですが)、最良の策を講じられるように、親族みんなが前向きに進めていけるように、準備をすることを考えましょう。

〇税制改正で相続税課税者が増加
これだけ世間で「エンディングノート」が取り上げられるようになった背景には、平成27年の、相続税制改正があります。
簡単に言えば、基礎控除額が下がり、全体で「3000万円+600万×法定相続人の数」になりました。配偶者控除は1億6000万円と、現状もっとも大きな控除額です。

●夫から妻へ全部相続するか子に分与するか
夫(妻)に先立たれ、配偶者が残されたときの子供の心情としては「お母さん(お父さん)にすべて譲って…」でしょう。
不動産を日々管理している立場から言わせていただければ、この一時相続は「ちょっと待った」です。このタイミングで、子どもだけがのちに相続することになる場合(二次相続)を考えておく必要があります。

●遺言書作成のときから分け方と相続税に備えを
財産分与は、法定相続割合というものが法律で決まっています。遺言があればこの割合に沿わず、遺言の通りに分与することも可能です。
先立った被相続人ひとりの意思で「配偶者に全部相続させる」と書かれていたとして、仮に配偶者が「いらない!」と放棄してしまったら…。故人の意思と関係なく、遺産分割協議を相続人全員で行うことになります。
遺言を残すなら、そのときから分け方を考え、遺贈を受ける相続人の意思もできれば確認し、無駄に終わらないようにすることが、トラブルを避ける第一歩かもしれません。

●二次相続を視野にいれた分け方で相続税カット
前述したように、一時相続で配偶者に全部の遺産を相続させたとき、相続税は(控除が大きいので)非課税となる場合が多いでしょう。しかし、配偶者控除がない、子どもだけの相続(二次相続)では、金銭的に負担を感じるほどの税額になる可能性があります。
例えば、資産価値8000万円の土地建物を、配偶者一人が一時相続した場合、基礎控除内で相続税は0円です。
しかし、その配偶者が亡くなって子どもだけで相続をする場合、ここで子どもが二人と仮定すると、一人当たり4000万円を相続することになります。計算するとこのときの相続税額は合算で470万円となります。
一時相続のときに子ども4分の1ずつ、配偶者2分の1で法定相続割合に沿って分与した場合、一時相続の際に子どもへ合算175万円の相続税が発生します(配偶者は控除内で0円)。ただ、基礎控除が低い二次相続時には、配偶者分の4000万円を二人で相続し、2000万円ずつになるので、子どもに相続税は発生しません(基礎控除内でおさまる)。
トータルで295万円もの相続税を減らす計算になります。
例を挙げてお話ししましたが、相続が現実に行われるときには、先先のことを考えての行動はしづらいものです。あらかじめ心づもりをするつもりで、相続に対して家族、親族と話をしておくと、結果として皆が余分に相続税を払わなくてよい状態を作りやすくなります。

【著  者   長 岡  利 和】


投稿日

カテゴリー:

最新記事一覧