相続税が身近に感じられる様になったのは、税制改正が行われた平成27年からでしょう。土地付き一戸建ての持ち家、またちらほらと話題になっている確定拠出年金や投資信託などの「老後資産形成」。少しでも自分たちの余生を楽しみながら、子どもたちに残せる資産をと考えていた親にとっては思わぬ税制改正だったのではないでしょうか。
また、その資産を引き継ぐことになる子ども世代にとっても他人事ではありません。親子でしっかりと話をして、後に家族間トラブルを招かないようにしておきましょう。
○相続開始はいつ?
親が健康で毎日を過ごしているうちは、相続のことなど考えようという話にも及ばない家族が多いでしょう。しかし、病気や往生で親の死を予感するきっかけを待っていては、突然に不幸が起こった場合、慌てるばかりで大事な話も後回しになってしまいます。
相続開始は、被相続人の死亡によってスタートします。悲しみにくれている間に、必要な手続きをするタイミングを逃してしまうことも想像できるでしょう。
大切な人を失う前に、話すべき相続のことは、その後の家族を守るために必要なことだと考えておくべです。
○相続の手続きと延滞税 追徴金は?
相続税の申告は、相続開始を知った(被相続人が死亡した日)翌日から10ヶ月以内にする事と法律で定められています。
申告だけではなく、相続税の納付期限も同じです。相続について話し合いをして、決着をつけ、相続税の申告を行った上で税金の納付まで済ませなければならないのです。
納付が遅れたら延滞税が、誤って少なく申告した場合は(税務署の調査で発覚すると)過少申告加算税が発生します。相続税は現金一括納付が原則です。不動産などの「もの」で受け取った遺産に対する税を「金」で払ううえ、申告期限を越えたら7.3~14.6%(延滞期間が2ヶ月の前後によって異なる)の延滞金を余分に支払わねばなりません。
○相続の効力と効果
遺産相続は、被相続人(例えば親)が死亡したときから、原則その相続財産を「包括的に継承」します。包括的とは、プラス・マイナス資産ともに引き継ぐという意味です。
相続人が複数いるときは、相続の分割を確定するまでの間、相続人全員が遺産を共有します。
中には、負の財産はいらない!と言い張る相続人もいるかもしれません。その人は別の手続きが必要で、手続きまでの期限も決められています。カネの切れ目が縁の切れ目、という言葉もあります。お金の話と家族の話は、殊に尾を引き、根深いトラブルの元になりやすいのです。
全てが後手にならないうちに、家族間でしっかりと話を詰めておくこと。これが後の家族が幸せに暮らしていくために必要なことでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】