特に地方では、「電車は時間に正確な乗り物だ」という印象をもつ人が多いです。バスと電車、どちらで目的地に向かうかを迫られると、「時間が読めるから電車で」という答えが返ってきます。
ただ、東京の電車は一概にそうともいえません。なかでも中央線は、事故が多く遅延の発生頻度も高いという話は、東京で生活する人にとって、もはや日常として受け取られます。
2017年9月に2件、10月も2件ほど事故が発生し、いずれも駅構内で起こっています。
○鉄道事故が頻発するJR中央線
中央線のダイヤが乱れるのは、首都圏で生活する人にとっては「想定の範囲内」の出来事です。天候不順や複線のトラブルなど、中央線が通常運行しない理由はいくつかあります。
なかでも、他のJR線に類を見ないほど多いのが、事故による遅延です。
●事故発生件数をみると
JR中央線の鉄道人身事故(列車または車両の運転により人が死傷したもの)発生件数は、2010年から合算して244件。
(http://accident.neetla.be/stats/route/32 参考:全国鉄道人身事故ランキング)
JR東日本全体で見ると、2016年には138件の鉄道人身障害事故があったことが報告されています。
(http://www.jreast.co.jp/youran/pdf/2017-2018/jre_youran_anzen.pdf
参考:JR東日本会社要覧2017年版)
●沿線の踏切事故が減らない?
同じくJR東日本全体の統計ですが、鉄道人身障害事故件数が2009年から2016年にかけて概ね右肩上がりしている点は気になります。
しかし、同期間の踏切障害事故(踏切道において、列車または車両が通行人や通行車両などと衝突・接触したもの(JR東日本会社要覧より引用))が40件前後で毎年推移していることは見逃せないと感じています。
JR中央線は、都心部からベッドタウンを走る、いわば関東圏に住む人の生活に欠かせない沿線です。複雑に入り組んでいる複線との連絡や、過密なダイヤによって、「開かずの踏切」が所どころにあるという話題が情報番組のネタになるほど。
踏切問題は、各線路の拡張工事や、2020年のオリンピック開催に向けた開発事業でも解消を図ろうとする動きが見られますが、人口の多さと便利さをバランスよく保つところに、危険を徹底排除する難しさも感じます。
○JR中央線の人身事故と世情の関係
鉄道事故は、事故にあった人に縁深い人だけが関わることではありません。列車まちをしている人や、事故車両に乗り合わせた人、周囲で目撃した人、遅延が発生して時間に切迫する人など、数え切れないほどの人が影響を受けます。
一時的な影響だけではありません。鉄道関係者はその悲惨な事故処理や現場検証、車両点検や清掃に携わります。目撃や事故の衝撃を体で感じた人は、これから先も経験を思い出す瞬間が幾度もあるでしょう。
JR中央線の事故被害者は10代~30代が全体の6割を占めています。若者の人口が増加している東京で、悲惨な事故の現場に居合わせたり、関係者になったりする人が減ることを願うばかりです。
【著 者 長 岡 利 和】