被相続人がどのくらい現預金を持っていたか。またどれほどの不動産をもち、借用金額があったかどうか。すべてを把握しないまま、被相続人が死亡してしまうと、その実情はおろか、証明するものがどこにあるかも分からないままというケースは珍しくありません。
実際に、遺産がどの位あるのかが、わからないままであれば、証明するものがない事で、相続財産を知る手立てが無くなります。相続人が隠れた財産の存在を知らないまま、遺産分割を終え、後から送られる通知などによって遺産が見つかることもあります。
○相続税申告後に預金が見つかった場合
相続の税務申告をする時には通帳が見つからず、一時してから預け先より満期のお知らせ等が届いて、財産の存在を知ることがあります。
既に相続の話が終わり、税の申告まで済んでいる場合は、この現預金等の遺産分割協議を改めてする必要があります。
ただし、原則は相続するべき事由の発生を知ったときから10ヶ月以内に行う、となっているので、申告漏れや遅延に対する追徴課税が起こる事もあるということは知っておきましょう。
○相続の税申告が済んで借用金の催促をされた場合
一言に相続といっても、プラスの資産だけとは限りません。被相続人が生前に借り入れた金銭があれば、その負債も相続遺産です。
ですが、プラスの資産を分割する時と同じ手続きとはいきません。負債の場合、仮に相続する人を一人に限定したとしても、その催促は相続人全てに対して行った場合は効力を持ちます。法定相続割合に応じた借金の返済をする義務は免れないとされています。
ただこの場合は、返済をすべき借金かどうか、という議論も起こりそうですね。実は被相続人が全て返済の終わっている債務で、二重に請求されているかもしれませんし、経過年数によっては時効に掛かるかもしれません。
いずれにしても、借用証書や記録(日記やメモ)、返済したときに受け取った領収書など、証拠になりそうなものがないかを整理し、専門の弁護士等に相談した方がいいでしょう。
○税申告後に生命保険金がある事を知った場合
被相続人がかけていた生命保険金は、相続財産とはいえません。これは、被相続人が生前受取人を指定して、支払い発生事由が起こった時点で受取人が受領するものです。
生命保険の証書を見ればわかりますが、仮に固有名詞ではなく「相続人」となっていれば相続財産として扱います。
相続トラブルは、明らかな被相続人の意志表示(遺言書)がない分割遺産分配のときと、前述したように後から相続財産が見つかった時に起こりがちです。
税申告をして終わったつもりだったのに、後から相続の話が持ち上がるのは、さらに親族間の関係を悪くする原因になります。また、申告すべき相続財産が漏れている事になりますので、税加算が起こる可能性も考えられます。
早急に専門の税理士等に相談する様にしましょう。
分割が終了した時点で、「以後、新たに相続財産が見つかった場合は、(特定の)○○が全て取得する」など、相続後に問題となりそうな事もあわせて協議しておくのが賢明でしょう。
【著 者 長 岡 利 和】