相続税の納付話が、巷でもちらほら聞かれるようになってきました。大資産家でない限り、自宅の土地建物やマンションの所有がある程度で、大きな預貯金もないし…と思っていた一般サラリーマン(退職者)の人にとって、またその家族にとっても、縁が無いと思われていた相続対策。
今では住宅メーカーや税理士、FPに保険会社まで相続の対策講座を開くまでになりました。
相続をはじめて意識するのは、夫婦の内どちらかが先立つときに残された配偶者とその子どもに対して行うタイミングでしょう。
○一次相続の税金と配偶者控除枠
親夫婦の内どちらかが他界すれば、配偶者とその子ども(いなければ法定相続人)に対して財産を分与する事になります。
現預金や株式などは分与する事
ができますが、不動産は一体の形を崩す事はできません。なにより「高い」というイメージが強い相続税支払いのために、不動産を売却して納付金を準備していては、残された家族は家を失いかねません。
そこで、残された配偶者に対して控除を厚くし、後の生活を守るために「配偶者特別控除」があります。
●配偶者相続額から1億6000万円を控除
具体的に、相続税を非課税にする事ができる可能性の高いこの「配偶者控除」をどの様にして計算すればいいのかを紹介します。
原則、控除を受ける人も受けない人も、遺産分割にかかわる相続人は相続税の申告を要します。各人の相続額が決まったら、控除適用のために申告を行います。
相続財産(法定相続分の額)が1億6000万円よりも少なかった場合。実際に相続をした財産が1億6000万円よりも少なければ、相続税は非課税になります。
法定相続分が1億6000万円よりも多い場合。実際に相続した財産額が、法定相続分より少ない額であれば非課税になります。
○子どもへの相続と二次相続税
配偶者控除のメリットを最大限に生かして、相続税を非課税にしたいという考えはもちろん共感できます。ただし、子どもが法定相続人にいるなら、目の前の控除額だけでなく、二次相続の事も考えておかねばなりません。
●二次相続がつらい!配偶者と子どものどちらが相続する?
一時相続の時点で、配偶者控除を最大限利用するのはもちろん結構な話です。ただ、子どもがいるなら、その配偶者が被相続人となる「二次相続」の対策までをきちんと行っておくべきでしょう。
控除を生かして非課税になった配偶者が被相続人となった時、その遺産を分与する人の中に控除対象になる配偶者はいません。子どもたち世代が、相続税の基礎控除以外に受けるべき控除や減免はなく、全うに相続税が課税される事になります。
●二次相続を考えて一時相続の仕方を決める
配偶者控除は、一見魅力的に感じられるかもしれません。しかし、ゆくゆく子どもたち世代だけになった場合、配偶者の遺産をそのまま(それ以上にして)子どもに渡す分だけ、子どもは相続税を多く払う事になってしまいます。
一時相続の時点で、(配偶者控除は魅力ですが)できるだけ多く子どもへ相続させておくこと。これが二次相続まで含めた相続税額をおさえるためのポイントとなります。
家庭の財産状況によって、事情や実際は全く異なります。相続問題に詳しい弁護士や、税理士に相談してみても良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】