相続税といえば、巨万の富があるお金持ちにしか関係が無いと思われがちだった税金。しかしそれは過去のこと。今ではマイホームを所有しているだけで、相続税を支払う義務を負う可能性があります。
不動産については、その評価が大きな分かれ道となりますが、相続税の課税対象者がこれほどまでに増えた理由はただひとつ。「基礎控除額の引き下げ」です。
○相続税支払いがなぜ必要なのか
多くの人は、毎日の生活を維持するために労働をし、その対価として給与(おかね)を得ます。現預金を手にして生計を維持するのが広く一般的ですが、そのサラリー(給料)を得ずに、既に手にしている財産を以って収入を得ている人や、財産を多く所有している人から受けついだ資産は、もらった人にとってはいわば「たなぼた」的な財産です。
本来、自分が働いて得たもの以外にもらった価値ある不動産や現預金などは、その年の所得となります。ならば、通常の給与から所得税が惹かれるように、所得に対するなにかしらの課税義務を負う…これが遺産を受けた人に課される「相続税」です。
○所得と相続税の関係 税金徴収の考え方
相続税の考え方の根底にあるのは「資産または財産の集中をさせない仕組み」といえるでしょう。引き継ぐ財産を多く所有していた被相続人から、血族が繰り返し引き継いでいく財産の流れは、その限られた人(または親族・血族)に資産を集中させてしまう事になりかねません。
日本の税金システムは「所得が多い人から多く納税してもらう」という考えが元となっています。生活が苦しい・所得が低い人からは出来る限り少なく、所得や財産が多い人からは多めに税金を徴収し、国民が一定水準以上の生活を営めるように配慮します。
○相続税額を少なくできるのはなぜ?
傍目に資産家の様子を呈している一族が、相続税の納付を工面する様子なく、変わらずお金もちのままでいるのはなぜか。これは、一重に節税対策をしっかりと施しているからでしょう。
相続するのは、何もプラスの財産だけとは限りません。例えば事業承継する場合、一定の資産があったとしても、同時に事業を行うための負債も抱えています。
負債があれば、評価額と負債額を差し引きし、それでもプラスになった場合は、そのプラス分に対して相続人それぞれが税金を負担する事になります。ですから、資産がある分負債を計画的に生み出し、償還して資産を作ることを繰り返しているのです。
節税に対する取り組みは、事業家に限った話ではなく、実家を相続する子どもや配偶者にとっても同じことが言えます。
土地つき一戸建ての実家を相続する場合、土地の評価はその時勢によって変わりますが、建物の価値は減価償却により減少します。一等地に建っている実家の土地評価が高いなら、仮に上ものの建物に対して負債を創出して差し引きし、プラスの資産を計算上発生させない様にすれば、相続税を払うように求められることもない、といえるでしょう。
税金の仕組みが分かれば、その支払うか税額もコントロールできる可能性があることが分かります。仕組みの「なぜ」を知ることで、大きな節税効果が得られるかもしれませんね。
【著 者 長 岡 利 和】