折しも「マイナス金利の今だからこそ、マイホームを建てましょう」と、あらゆる住宅ローン取扱金融機関がのろしを上げています。実際に、借りかえを推し進める機関も多く、また金融商品に加えてあらゆるサービスを付加して、ローン顧客の獲得をねらっている様子が見られます。
住宅ローンが身近に、そしてお得に感じられる今だからこそ、これからマイホームを建てたいと考えている人は慎重に資金計画を立てるべきでしょう。
○マイホーム貧乏を招く?購入するタイミングと収支バランス
「金利が低い」という事実は、マイホームを検討している人にとって大きなきっかけであり、十分に思い切るタイミングを後押しする事由です。ただし、安直に「低金利」に注目していると、返済が始まってから住宅購入を後悔することに成りかねません。
大切なのは、金利ではなく契約内容そのものであり、返済プランと収入のバランスなのです。
●マイホームを買うなら「頭金を多く返済期間を短く」
一部住宅ローンを扱う機関には、「低金利だから細く長く借りたほうがお得」という類のセールストークを行っている所があります。ただしこの低金利の恩恵をしっかりと受けることができるかどうかは、時勢に大きく関わるため、返済した後でなければ比較出来ないのが実情です。要は、結果論なのです。
今の低金利時代が長く続くとも限りませんし、これ以上低い金利になることも十分考えられます。
金利の話は一旦おいて、住宅ローンは長期間に渡る借金だという事をまずしっかり意識しておくべきでしょう。当然、借金なら「借りる額は少なく、早く完済するのが理想」でしょう。住宅ローンも同じです。出来るだけ元金を少なくし(自己資金を多く準備して)、返済期間を短くすることを考えましょう。
●マイホーム返済は意外と大変 貧乏気分に陥るリスク
これまで賃貸物件で生活していた人が「家賃と同じくらいの返済なら出来るはずだから住宅ローンも返済できる」と思うのはよくある話です。
ただ、家賃と同じ額の住宅ローンを組むと、返済開始後は住居費の割合が上がります。これは間違いありません。なぜなら、所有した不動産には固定資産税が発生し、メンテナンス費用や修繕費用は全て自己負担になるからです。
土地建物の不動産があれば、固定資産税はそれぞれに課税されます。家賃にプラスして数十万円ほどの税金が別途必要になるのです。貯蓄にまわせるほどの額が税金で消えるかもしれません。
●固定金利住宅ローンで安心するのはNG
住宅ローンの金利変動があった場合は、当初の返済計画額を上回る可能性もあります。35年固定型以外のプランは、全てこの危険があるのです。有期固定金利期間が終われば、その後は変動金利型と同じ契約となるため、その時勢で金利は変わります。
固定期間満了後に金利優遇を行う特約や、生命保険を附帯するといったサービスもありますが、契約途中で金利が変更になるローンは、返済総額が当初の計画通りにいかないリスクを十分に把握しておきましょう。
月毎の返済額が数千円変わっただけでも、家計にとっては大きなダメージに感じるでしょう。掛かる税負担や金利変動のリスクを知らないままにローンを組むのは、適切な返済計画と言えません。
ローン貧乏にならないために、リスクや契約、返済プランを吟味し、無理な計画を立てないこと。これが幸せなマイホームプランの原点といえるでしょう。
〔著 者 長 岡 利 和〕