相続税の改正が行われて、間もなく丸2年を迎えようとしています。この間に相続税計算を行う事由(被相続人の他界)があった場合、新たな税制度の適用に戸惑ったことでしょう。
従来の相続税課税限度額から4割も引き下げられた基礎控除の計算の結果、多くの相続税を納めることになった人もいれば、段階的相続税率の細分化で、反対に相続税が安くなった人もいます。
ここで、改めて相続税についておさらいをしてみましょう。相続基礎控除限度額の変更を含めて、正しい申告を行うようにしましょう。
〇相続税の申告はいつまで
「相続」という言葉を聞いただけで、面倒だ・煩わしい・トラブルに巻き込まれる…といったイメージを強く感じる人も少なくありません。そして、相続なんてテレビドラマの世界に限定された異次元の作り話だと思っていませんか。
●相続税の「引き受け」意思とその限度 相続方法を決める
相続の対象者は民法で定められていますが、それぞれが被相続人とどんな関係なのかによって、相続割合も決まっています。
しかし、この相続分割が「必ず」ではなく、被相続人の意思(遺言)に左右されるという点が、相続の難しいところ。相続の方法を、まずは申告する必要があるのはこのためです。
一般的な考えに沿っているのは「単純承認」でしょう。プラスの遺産だけではなく、借金などマイナス負債も相続するという意味です。
次は「限定承認」ですが、これはプラスとなる財産を限度に遺産を引き継ぐというもの。負債は引き受けません(相続財産を限度として、借金が残るなら相続しないという方法)。最後に「相続放棄」ですが、これは最初から相続人ではなかったという扱いをされることです。相続財産は一切引き受けないと明言することになります。
●相続税の申告前にもめる時間はなし
相続方法の申告は、相続開始事由が起こった翌日から(知った時から)10か月がリミットです。相続方法の申告は相続開始時期から3か月以内に行います。
10か月も時間があるんだ…と思うのはNG。被相続人が亡くなってからの10か月は、いろんなことを調べて、そして協議し、さらに申告書類を作成するといったように、とても忙しい時間となることを想定しておいたほうが良いでしょう。
正しい相続税申告を行うためには、遺産を正しく評価してもれなくはじき出し、相続人の特定も慎重にせねばなりません。
資産の管理をしていた本人がいなくなってから、すべての財産を洗い出すのは非常に難しいものです。身内の知らない借金や、実は法定相続人が別にいた(隠し子など)という、人間の陰部分もあらわになる事があります。トラブル解決に至るまで、じっくりと取り組む時間として、10か月はあまりにも短い期間と言えます。
10か月を限度に、一応の相続税申告用紙を埋めて提出することが出来なければ、延滞税(年14.6%)や無申告加算税(年5%以上)といったペナルティが加算されます。
あらかじめ生前から、相続税を前向きに考えて、資産整理や親族への周知、相続人との連絡と情報の共有など、必要な情報を整理しておくのが賢明です。
【著 者 長 岡 利 和】