相続税計算のなかで「連帯債務」をどう扱うか

遺産には、土地や建物などの不動産や預貯金、生命保険などのプラス遺産と、借用証書・ローン・金融機関からの貸付金などのマイナス遺産があります。
相続をする場合には、プラス・マイナスの遺産すべてを受け継ぐ単純承認と、プラス遺産部分にのみ限定して引き継ぐ限定承認、遺産を受け継ぐ権利そのものを放棄する相続放棄、の3パターンがあります。
相続分与の難しさは、なにもプラスの遺産を分割する時だけではありません。単純承認すればマイナスの借金部分も受け継ぐことになります。相続によってその後返済しなければならない負債がのしかかるのは、望ましい状況と言えないでしょう。
しかし、相続税の計算をする上では、「相続税課税額を減少させる要素」となります。

〇相続税計算に債務を算入するときの注意
被相続人が有していた遺産を相続人が分割して受け継ぎ、その受け継いだ資産価値に応じて相続税の計算を行います。
預貯金や生命保険など、額面でその価値がわかるものの分与は、相続税計算が非常に楽でしょう。しかし、不透明な要素があるものの分与を受けた場合、相続税をどのように計算して申告したらいいのか迷う部分も出てくる可能性があります。

●二人以上で担う債務 「連帯債務」の扱い
連帯債務とは、文字通り、一つの債権債務関係において、その返済を二人(以上)の債務者が連帯して行うということ。例えば1000万円の借金をしていた主債務者がいたとして、その連帯債務者も同様に返済義務を負うという契約です。
一見理不尽にも思えるこの連帯債務契約、しかし、貸し付ける側としては、本人の返済能力や社会的信用レベルなどを見て、確実に債権を回収するために講じる手段です。連帯債務者のどちらかに請求して全額を回収する見込みを得るという後ろ盾のようなものでしょう。
相続遺産として連帯債務契約のある借金を引き継いだ場合、相続税計算を行うときは「負担部分(二人で借りた1000万円の借金なら折半した500万円のこと)」を算入することができます。ただし、もう一人の連帯債務者の支払い能力が明らかにないと認められる場合、全額算入できる場合もあります。

●連帯債務と連帯保証は似て非なるもの
連帯債務は、一つの額面債務を、連帯債務者のいずれかに全額支払いするよう求めることができます。負担部分以外の全額を相続税計算に参入することができる理由はここにあります。
連帯債務と似た言葉で、「連帯保証」契約があります。これは債務を保証する契約ですので、実際に支払うかどうかは分かりません。不確定要素の債務は相続税計算に参入しませんので、保証債務は原則、控除することができません。
法的な文言や相続税計算に参入するかどうかなど、素人では判断しづらい部分がたくさんあるでしょう。修正申告を重ねたり申告漏れをして追徴を受けるより、専門家に相談して正しい申告を行うようにしましょう。

【著  者   長 岡  利 和】


投稿日

カテゴリー:

最新記事一覧