相続税の基礎控除額が引き下げられてまもなく丸2年。その間に、マイホームや所有地を持たれる方々の話を聞き、さまざまな節税と不動産活用を考えてきました。
一戸建て住宅とマイホームが建つ土地を所有していれば、その価値如何で相続税が発生するかもしれない時代。分割することができない不動産を、相続人同志で後にトラブルとならないためにいかにして分与するか…。
いつか来るべき時のために、相続税節税のために知っておくといいいろんな豆知識を備えておいて損はないでしょう。
〇相続資産の種類と分与を想像してみる
資産形成や相続資産管理を考えるとき、一番に着手したいのは預貯金。どれほどの預貯金と有価証券があるか、これは最も把握しやすく、相続の分与と税計算を行いやすい反面、管理漏れも発覚しやすい資産です。現預金や証券は分与が明確にしやすいため、相続資産の中でもできるだけ早く、しかも迅速に話を勧めたいところでしょう。
建物は減価償却で、土地は時世でその価値が変化しますので、実際に所有している大きさ・広さ・所在をもれなく把握しておくことが大事です。
〇相続と節税 制度の導入と変更に注意を
相続資産があれば、その資産を受け継ぐ相続人が額や課税価値に応じて相続税を納付しなければなりません。そして、受け取った相続人が、相続をした後に納付するという流れに原則変わりはありません。ただ、後に相続税を納めることになる相続人のことを考え、あらかじめ節税につながる資産形成をしておくという手段はあります。
時勢に応じて、今後も税制の改正や変更が行われていくこともあるでしょう。相続を後に任せるのではなく、減額や基礎控除カット、一部免除など、減税につながるアクションを被相続人が起こしておくことが大切です。
〇預貯金を国債で?相続税が免除される制度とは
預貯金をいかにして管理するか。預金や株式、投資信託など資産形成と運用の方法はいくつかあります。NISAなどのように、後世の為に残す資産と基礎控除(免除)額をからめた相続税の考え方もありますが、節税と国勢は相反するものともいえます。
税収が少なくなれば国の予算を圧迫することになります。景気を刺激し、お金が流通する仕組みが必要ですが、消費が刺激されず預貯金を崩そうとしない(財産を残そうとする)個人にむけ、かつて「無利子非課税国債」の発行を実施した国もあります。
資産を国債購入にむけさせる目的で考案された、「利子がつかない代わりに課税も発生しない」というこの制度は当初、国と個人双方にメリットがあると思われました。
ただ、「国の借金を先送りしただけ」「実際に相続の重課税を求められるのは国民全体の数パーセントだけ」「金持ち優遇の免除制度」という検証もあり、日本ではまだ制度実施されていません。
住宅購入費の援助や配偶者控除など、相続税を非課税免除に向かわせるための対策は、現在もいくつか制度化されています。しかし、不動産の継承や配偶者控除などそれぞれの制度をきちんと把握しなければ、制度の重複や適用外になる可能性もあります。
知識を正しく知り、その時々に応じて前向きな相続と節税を検討しましょう。
【著 者 長 岡 利 和】