新居となる住宅や土地を購入して、新たな住まいを手に入れようとするのは夫婦間の問題…と考えるのがこれまでに多かった大筋の流れでしょう。
しかし、税制の改正で贈与税と相続税、所得税控除の動きが大きく見えた平成27年以降は、節税を軸に住宅ローンや住まいのありかたを考える世帯が増えてきています。
近い将来に起こるかもしれない相続や贈与を、今購入しようとしている住宅のローンと合わせて、節税効果について考えることが大切です。
〇住まう家族の世帯と住宅ローンを再考しよう
例えば、「実家暮らしをしていた子どもが、社会人となって独立して所帯を持った。
子ども夫婦が家を購入しようとしているが、自分たち(親世代)夫婦が住んでいる実家をこの先どうしたらいいものか」と悩む人が多いように感じています。
核家族化と言われていた時代から、核家族が当たり前になり、単身者世帯の割合も増加している流れから、空き家問題にまで広がりを見せてきた住宅のあり方。
今回の税制改正は、高齢化と住宅過多の今だからこそ前向きに取り組むべき問題に、節税を組み合わせた国策とも言えるでしょう。
〇夫婦の住まいから子ども世帯の同居へ
「住宅ローンの三世代同居改修工事等にかかわる特例」というものがあります。
これこそ、2016年税制改正の住宅過剰供給抑制に今後効果が見られそうな税制の一つです。
現在の祖父母に当たる年代の多くは、団塊の世代に当たります。
高度経済成長期から好景気の間に働き盛りな世代として過ごした、いわば裕福ゾーンの人たちです。
景気の波に乗ってマイホームを建て、メンテナンスを最も必要としている世代ともいえます。
この実家に、子ども世帯が同居するためのリフォーム改修を行って、子孫世代に長く使ってもらえる実家を引き継ぐという人たちに対して、税制優遇を行うというのがこの制度の主旨です。
〇子どもへ資金援助 贈与税の優遇にも着目
実は、2015年のとある調査では、注文住宅を建てた人の、実に2割以上が贈与を受けているという結果があります。
両親や祖父母から、住宅購入資金として受けた贈与の非課税枠が拡充されるという措置がスタートしました。
頭金の支援や、ワンランク上の住宅を子どもに購入してほしいと願う親夫婦の願いを、資金援助(贈与)という形で実現する幅が広がったことになります。
親世代の資金を、住宅ローン減税や特別措置と合わせて子ども夫婦への支援に回しやすくすることで、後の贈与や相続税に対しても前向きに、計画的に思慮するきっかけを得られます。
贈与や相続にかかる税金は、夫婦間では大きな控除があっても、子ども世代にわたる際の二次相続が大きくなる点に注意しなければなりません。
いろんな側面から、住宅とローンと減税と相続、贈与を見つめなおすと良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】