新年度を迎えて、転勤や転職、退職など、人生の節目を迎えた方も多いでしょう。都心部では、引っ越しを請け負う業者が不足し、年度末に引っ越しの予約が取れない「引っ越し難民」が急増したというニュースもありました。
購入した自宅を売却して、または所有したまま、新たな地へ身を移す人もいるでしょう。これから始まる生活の準備に追われる日々を過ごした事でしょうが、引っ越しを完了する前に忘れてはならない手続きがあります。それが「固定資産税納税義務者の住所変更」です。
〇売却して終わりではない 固定資産税の納付
所有するマイホームを売却するとき、多くの人は不動産業者に査定を依頼して買主を探してもらう、いわば「丸投げ」で処分することを想定するでしょう。
もちろん、不動産を扱う業者に依頼をしたほうが、個人で買主を探すよりもずっとスムーズに、かつ、なれない交渉や契約といった折衝に悩むこともありません。専門的な知識を持っている人に委ねるほうが安心でしょう。
ただ、売却・処分をすべて依頼したとはいえ、自分で手続きをしなければならない事は、きちんと速やかに行うのが吉。人の手に渡ったマイホームはもはや自分のものではない…と割り切るのは、その年の固定資産税支払いをきちんと完了してからにしましょう。
〇転居届と住所変更 手続きは役所で
それまで生活をしていた場所では転出届けを、これから生活を始める先では転入届を役所で提出します。同じ市内に転居するのであれば、さほど大きな問題になりません。しかし、マイホームを所有していた人が県外に転居するといった場合は、市民課(市民の居住地を管理する課)のほかに、固定資産税台帳の管理をする課にも手続きが必要となることがあります。
各市町村によって、住所変更(転出届け提出)の必要手続きは異なりますので、資産課等の担当課を尋ねて確認しましょう。
〇固定資産税納付書の送付と住所変更
仮に、所有していた不動産を売却した場合、翌年以後の所有者は買主に書き換えられます。法務局への変更登記届け出情報に基づき、年初め(一月一日)の所有者に対して固定資産税の納付を義務付けているからです。
ただ、期の途中で所有者が変わった場合や、所有者が不動産を処分せずに名義を残して転居する場合は、役所の担当窓口で当年の住所変更手続きを行いましょう。
固定資産税の納税通知は、4月頃に送付する自治体が多いので、今すでに転出している人は、納税通知書が手元に届かない可能性があります。
固定資産税の納付書が届いた後に転居する場合は、全期分を支払ってしまえば当面問題になることはありませんが、次年度以降もその不動産を所有し続けるならば、忘れないうちに必要な手続きを役所で終わらせておく方が良いでしょう。
【著 者 長 岡 利 和】