子育てがひと段落して独立し始める頃から、親世代は老後に向けていろんな準備をしておくべきです。普段何気なく生活している持ち家も、所有者にもしもの事があればそれは「相続財産」になります。相続は金品や不動産がもらえるだけではありません。負債や相続税の支払いなど、手元から捻出するものもあります。
残された財産をそのままの形で保持し、税の支払いは可能な限り少なくしたいものです。そのためには、生前贈与を前向きに検討すると良いでしょう。
〇活きたお金の使い方を生前贈与
自分たちが生きている間に、子どもにとって有益なことをしてあげたい…と思うのが親心。独立した子どもに何でも財産を渡していくと、ゆくゆくは支払うべき相続税は減らすことができるでしょう。そのかわりに贈与税が課税されるかもしれません。
まずは、税の仕組みをキチンと理解して、生前贈与と相続のどちらがベストかを見極める必要があります。
〇贈与税は相続税より高い?
一般的な税率は、相続時にかかる税よりも贈与のほうが高いです。ただ、この二つの税には基礎控除があります。そして、相続は「被相続人の死亡」により一回限りですが、贈与は生きている間に何度行ってもよく、課税額は一年単位で計算をします。よって、贈与する額を基礎控除範囲内でおさめ、それを毎年繰り返しているうちは贈与税が発生しないのです。
〇生前贈与は子より孫
親が他界する年齢であれば、子どもも成長、独立して相応の良い大人な年齢になっているケースがほとんど。親が子どもの相続を想定して、贈与税の控除を計画的に行っても、すぐに子どもが被相続人になるタイミングがやってきます。
ならば、親は子に贈与をするのではなく、その先を見越して孫世代に生前贈与することを検討しましょう。子どもと孫に相続税がかからず、孫に財産を残すことができます。身内が後に金策で苦労しないように、子・孫孝行を生前から考えておきましょう。
〇孫に生前贈与するメリット
子どもと配偶者に遺産の贈与をした場合、仮に被相続人が他界した後の財産処遇を案じて贈与し3年以内に他界すると、それは「贈与とみなされない」とする定めがあります。贈与したつもりが相続財産にカウントされるのです。
ただし、この定めは、被相続人と子ども世代にのみ摘要されます。極端な話をすれば、生前贈与を受けたのが孫だった場合、祖父母が無くなる直前に贈与しても、それは相続財産となりません。
また、子どもが大切に育てている孫への贈与は、なにより子どもから喜ばれるでしょう。教育費や生活費をやりくりする子ども世帯を、間接的に援助することになります。相続問題で家族を不安にするより、ずっと活きたお金の使い方と言えるのではないでしょうか。