相続税における妻の控除は、特例として軽減措置を受けることができます。その額はなんと1億6000万円までの免除となっています。びっくりする額ですよね。その理由と仕組みについて詳しく述べてみたいと思います。
■特例措置を受ける理由とは、
妻=配偶者には、老後の生活の為に必要な財産を保障するということ。相続する財産は、夫婦の共有財産なので妻の協力が大きく影響している為であり、次の相続までに期間が長くないと思われているためです。これらの理由によって、最大で1億6000万円までの免除という優遇措置がとられています。
■相続税の計算方法がネックとなるので注意が必要
相続税の計算方法は、順番を守って計算をすることが、損害を受けないですむことです。
相続税の計算方法は、順番を守って計算をすることが、損害を受けないですむことです。
1.最初に遺産の総額を計算します。この場合控除を受ける為には、1億6000万円以下であることが前提です。
2.遺産の総額から基礎控除となる金額を差し引いて課税対象となる金額を確定させます。
3.法定相続人の各自の相続税の合計金額を出す。
4.相続税の合計金額を、実際の相続分の割合で計算しなおします。
5.最終的な相続税の額を確定します。
遺産総額(課税価格)の計算式は、以下の通りです。
遺産総額(課税価格)=(プラスの財産-非課税の財産)-(マイナスの財産+葬儀費用)+相続開始前3年以内に贈与された財産
■妻の相続税の枠を最大限に利用すると?
妻の法定相続額は、相続財産の2分の1です。では、1億6千万円をすべて活用するとどうなるのか? メリット、デメリットがあるので紹介いたします。
・メリットは、最大限の1億6千万円を控除にあてると、相続財産が1億6千万円以下ならば、全てが非課税になるので、単純に考えるとこれが一番お得ですよね。
・デメリットとは、遺産を相続した妻がかなり近い期間で亡くなった場合には、配偶者控除が受けられない子供たちに大きな相続税が課せられてしまう事です。
<具体的な計算例=妻と子供3人の時>
基礎控除=3000万円+600万円x4=5400万円
直近で妻(配偶者)がなくなったその後の計算
基礎控除=3000万円+600万円x3=4800万円
・妻が全額遺産相続をした場合
最初の遺産相続で妻が全額遺産を受け継いで配偶者控除を1億6千万円すべて活用して非課税になって税金は0円となり最大限のお得な活用でした。
しかし、肝心の妻(配偶者)がなくなった場合には、1億6千万円に基礎控除が利用できるだけなので「1億6千万円-4800万円=1億1200万円」となります。
・妻が2分の1の遺産相続となった場合(8000万円)
妻は基礎控除と配偶者控除を2重で受けることができます。5400万円の基礎控除
その後、妻がなくなった場合、8000万円を相続することになります。3人分で分けるときには、「8000万円-4800万円=3200万円」が相続税の対象となります。基礎控除は4800万円です。これは、最初の基礎控除で5400万円とその後の相続で4800万円と10200万円の基礎控除を受けられるということです。
このように、一見として1億6千万円を最大限に利用したとしても、次の世代の子や孫に受け渡すことを考えれば、妻は相続遺産を全額受け継いで控除して0円にするよりも、妻の法定相続額2分の1で計算して、次の世代へは半分の相続額から基礎控除を差し引いたほうが有利となってきます。この仕組みを、知らないと損をしてしまうことがあるのです。妻が相続する時点で次の世代への橋渡しも考えてみてはいかがでしょうか。