住んでいた家を手放す理由は家庭によりけりでしょうが、売却して得る譲渡所得に対して、所得税が課せられるという事に注意しておかねばなりません。そして、売却した年は忘れずに確定申告を行いましょう。住宅の譲渡所得に対する控除を受けることができるのも、確定申告をすることが控除要件になっているからです。
○譲渡所得の計算方法は
不動産を売却した金額から、不動産を購入した時の金額(取得費)と譲渡する為にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて残った金額が譲渡所得になります。取得費には、購入時の仲介手数料や印紙税、登録免許税、不動産取得税、登記費用、公正証書作成費用が含まれます。しかし、建物の減価償却部分は含まれません。
○居住していた住宅の売却に対する控除
手放す不動産が、それまで住宅の用に供していた家屋だった場合は、譲渡所得から3000万円が控除できます。また、売却不動産が夫婦の共有名義だった場合は、それぞれで3000万円ずつの特別控除を受けることが可能です。
○3000万円控除を受ける条件
この特別控除を受けるためには条件があり、全てを満たす必要があります。
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特別な関係にある人への譲渡ではない
配偶者や親族などへ譲渡する場合は、3000万円控除を受けることができません。近親者への譲渡は贈与や相続に関わります。
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売却した年の過去2年に同制度を受けていない
3000万円の特別控除と同様に、居住用財産の買い替え・交換の特例適用を受けていないことも条件に含まれます。
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譲渡に際して以下の特例適用を受けていない
買い替え・交換の特例、固定資産の交換の特例、収用等による買い替え特例(5000万円控除の特例)
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住まなくなってから3年目年末までに譲渡
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住宅の取り壊し後に譲渡する場合は、取り壊してから1年以内に譲渡
この場合は、仮に期間を見たしていても、取り壊し後に土地を貸すなど収益をあげる行為をしたら適用を受けられません
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譲渡した年の3月中旬期限の確定申告を行う事
基本的に、特別控除は併用することはできません。同特例の中の条件によって、(共有名義の場合など)通常よりも多く控除を受けられる場合がありますが、どの制度を利用するかは、試算して節税効果が大きい方を選択して申告することになります。
○10年を超えて所有した住宅の譲渡
所有期間が5年未満(短期譲渡)か5年超か(長期譲渡)によって税率が異なります。長期譲渡のほうが税率は低くなるので、節税に適しています。さらに、10年以上の間住宅の用に供していた家屋を手放す時は、3000万円控除した後の譲渡益が6000万円以下の部分に10.21%、6000万円を超える部分に15.315%の所得税率が適用されます。短期譲渡は譲渡益の30.63%、長期所得でも15.3%の税金がかかる事と比較すると、所有し居住していた期間が長い家屋であればそれだけ、課税対象額が低くなるという事です。住宅関連の制度や特別控除の額は、毎年なんらかの変更がされています。それらの情報を上手く察知して、自らが所有する不動産を上手に売却し、控除を受けて所得税額を節税しましょう。
【著 者 長 岡 利 和】