マイホームを手に入れるためにコツコツと貯金をして、一定額が貯まったタイミングで住居購入を思い立ったという話を良く聞きます。住宅を所有するという一つの目標を定めて、日々貯金に励んだ結果、まとまった金額を準備することができるというのは、相当の努力をしてきた賜物でしょう。しかし、その貯金全てをマイホーム資金として頭金にするという考えは、一旦思いとどまったほうが良いかもしれません。
○借入額を増加させる諸経費ローンはNG
マイホームを購入したら、登記費用や住宅ローンの保証料、火災保険、引っ越し代などが必ず必要になります。大まかな計算をしても、これらの諸経費は新築物件価格の5パーセント程度になるという試算もあります。新築なら、地鎮祭や近所あいさつ回り、上棟式などの細かな出費が立て続けに発生します。また、中古住宅を購入する際は、不動産会社への仲介手数料を報酬として支払わねばなりません。物件価格の10パーセントを手数料として別途準備しておくことを要します。
●諸経費を更にローンで借りるか
住宅購入の際に、同行住宅ローン金額に諸経費を含めることができるプランを案内する金融機関もあります。一見利用者にとってはありがたい話に感じるかもしれませんが、ローン残高が増加した分、数千万円単位の総額に上乗せして金利が発生することを考えると、金利の支払いがさらに拡大します。低金利時代とはいえ、例えば3000万円元金の金利1パーセントを考えても年間で30万円は利息に消えてしまうのです。この元金を更に上乗せして諸経費に充てるより、別に貯蓄準備をしておき、ローンそのものを増やさないようにするのが賢明でしょう。
○無理なく返済できる金額とは
住宅ローンの返済額を決める時、月額いくらなら返済に充てられるかを基準にして考える人が多いようです。実際に返済が始まってから、やりくりが難しく続かないような設定にするのは論外ですが、「これまでの家賃程度なら払える」という判断材料は頂けません。
●不動産所有で掛かる費用を考える
賃貸物件に住む場合は、家賃の他にせいぜい共益費と町内会費程度の支出が発生するくらいでしょう。しかし、不動産を購入すると、税金がかかるということを念頭に置いておかねばなりません。不動産取得税や登録税は一過性のものですが、固定資産税は毎年課税されます。また、住居の不具合が発生した場合や、経年による劣化や腐食に備えた修繕金も考えておかねばなりません。税金や修繕費は、毎年または5~10年後に必ず必要になる支出です。毎月の住宅ローン返済と合わせて、これらの付帯費用を別建てで貯蓄しておけるような支出バランスを考えておく必要があります。まとまった貯金全てをマイホームの頭金にするのではなく、諸経費や必要な税金を残しつつ、返済も貯蓄をすることを前提にした金額をはじき出すことが、無理のない住宅購入に繋がります。
【著 者 長 岡 利 和】