今時代は超低金利。マイナス金利政策が発動されて以来、景気を刺激するはずの国策は実際に功を奏していると実感しているのも僅かな人材のみ・・・という暗いニュースが続いています。
とはいえ、10年ほどまでは3パーセント台が当たり前だった住宅ローンの金利が今となっては1パーセントを割り込む商品も珍しくなくなっています。
消費税の増税を考えても、「今が買い時だ!」と奮い立ちたくなる気持ちもわかりますが、今の家計の状態を知ることも大切です。今、頭金にするほどの貯金はありますか?
○計画倒れを引き起こしやすい住宅ローン頭金0計画
住宅ローンの申し込みをしたいけれど、今まとまった貯金がない。そう悩んで住宅購入を諦めている人も多いでしょう。かつては、購入金額の9割しか貸し付けをしない金融機関が多く、住宅金融公庫(住宅金融支援機構)もそれにならって自己資金がある上での融資が前提でした。
しかし、現在では、多くの金融機関で満額の貸し付けを行っています。審査が普通のローン商品よりも厳しいとされるフラット35でも、全額貸付をスタートさせました。
●なぜ全額融資の住宅ローンが増えたか
銀行系金融機関での住宅ローン融資が当たり前と思われていた時代は昔の事。今はインターネットバンキングなどの次世代銀行の形が普及し定着しています。
これまで当たり前に得られるはずだった顧客は、よりサービスが良い・金利が安いネットバンクやモーゲージといった新しいスタイルの融資先に流れつつあります。サービスの一環で始まった「頭金0円住宅ローン」は、あっという間に一般的な商品となりました。
そのため既存金融機関も時代の流れとニーズに沿って、各社しのぎを削っている結果、現在では少額準備金、または頭金0での融資が可能になったのです。
●住宅ローンの借入金額による錯覚
頭金がなくても家が買える。これだけを単純に説明されれば「自分たちにも家が買えるかも」と考えがちです。しかし、安直に融資を受けることを前向きに考えるのは危険です。
住宅は、一生に一度あるかないか。その後の人生大半を、借入金支払いに縛られるという、文字通り「人生を掛けた買い物」です。となると、夢も膨らみ住まいやすさと理想を追求したくなります。
思い描く理想の形をすぐに実行できること、また計算する額が数十、数百万単位となることから、返済する金額に対しての管理が甘くなりがちです。確かに住宅本体は融資を受けることができるかもしれません。
しかし、家を一軒所有するまでにかかる費用や、購入後に発生する修繕費も同時にのしかかってくる事を忘れてはいけません。
●本体以外に掛かる費用は別立て
賃貸住宅に住んでいる人の中で「今の家賃と同じくらいなら返済できる」という考えの人が非常に多くいます。しかし、自分の持家での生活を手に入れるまでに、税金や登記、手数料の支払いや修繕にかかる費用への備えなど、家賃以上に費用が発生する要素は沢山あります。それらを加味して、尚且つ毎月支払い可能な額を決めなければ、机上の空論で支払いが難しくなってしまうかもしれません。
資金計画をしっかりとイメージしてから、住宅購入に踏み切るのがベストです。安易などんぶり勘定では、家計が破たんしてしまう可能性があります。その第一歩として、頭金0の購入は、金利も多く払う事になりますし、慎重に慎重を期してからこそ利用することができる金融商品でしょう。
【著 者 長 岡 利 和】