親元を離れての生活が長い、また子ども世帯で住居を構えると、実家の相続をどうするのかという問題がいつかは必ず出てきます。
特に、親子が遠距離で生活をしている場合、実家に帰る予定もない子どもが相続をする事になると、おおよそ売却をするという話し合いに進展することになるでしょう。
その時に気を付けておかねばならない注意点がいくつかあります。このポイントを逃すと、所有している間に課税される固定資産税の額が大幅に上がってしまったり、実家のある自治体から勧告が届いたりする可能性があるのです。
○相続する住宅を放置しておくのはNG
親が所有する実家の土地建物を、誰がどのように相続するかという問題で長くもめていると、遺産分割が進まずに時間だけが経過してしまいます。更に相続税を支払う必要に迫られると、その関係は更に悪化する事も考えられます。
実家を処分するのは気が進まない、とはいっても故郷に戻って生活をリスタートさせるのは困難。離れた実家の処分を任せられる人がいない・・・このような理由で、時だけが経過し、行きつく先は「空き家」となって放置されるケースも少なくありません。
相続人が決まれば、その人に対して固定資産税の納付書が送られます。ここで、税金だけ支払っていれば良いだろうという考えはよくありません。家は人が住まなくなった途端、老朽化のスピードが速くなります。一年もたてば、人の住まない家は文字通り空き家のように、あっというまに朽ち果てた印象に変わります。
この状態を、自治体が放っておくことはできません。国土交通省のガイドラインに沿って、各自治体が条例を定め、特定空き家として指定した場合は、立ち入り調査や修繕管理・解体の助言指導を行う事ができるようになりました。指導に従わない場合は、代執行手続きも取られかねません。
○安易に住宅を壊すと固定資産税が上がる?
不動産に対して固定資産税がかかるのはご存知でしょうが、土地に居住用の建物が建っている場合には、土地・建物それぞれに軽減措置が取られます。これは、固定資産税と合わせて課税される都市計画税も同様です。
仮に、「建物があると処分しづらいから更地にして売却しよう」という相続の話が進み、建物を取り壊してしまった場合、土地分の軽減措置が無くなってしまいます。もちろん建物の固定資産税は無くなりますが、老朽化した家の減価償却はすでに終わっており、課税額も微々たる金額と言う場合が多いのも事実です。
倒壊寸前の建物でも現存していれば固定資産税が安くなる、この発想から空き家問題も深刻になったと考えられます。正当に相続を進める事を考えると、そのまま放置するというのは良い発想とは言えないでしょう。何かしらの処分方法をあらかじめ検討して相続を前向きに話し合っておくことをお勧めします。
【著 者 長 岡 利 和】