一戸建て住宅の建築を依頼するときに、必ず取り交わされる「工事請負契約」。依頼する業者にとっては毎度おなじみのルーティンワークのように、慣れた様子で契約の手順を進めていきますが、購入する側の依頼者にとっては、すべてが初めてで不安も多いでしょう。
一見しても文字が非常に多く、実印を押すのもためらってしまうほど難しそうな内容が列挙されています。ただ、ここで実印をあっさりついてしまうと、内容についてすべて了承したという意思表示をしたことになります。
あとで「そんなつもりではなかった」と後悔しないために、しっかりと内容を確認しておきましょう。以下、工事請負契約締結時にチェックしておきたい注意点を紹介します。
○工事請負契約約款の内容
工事の請負契約を締結するときに、まずは約款に目を通しましょう。これは、トラブルが起こった場合の解決方法などが記載された書類です。設計の変更や、工事遅延・支払遅延の場合の利息や違約金・天災等で工期を変更した際の取決めや損害負担・瑕疵担保責任の期間…と、さまざまな内容を列挙しています。
実は、住宅が完成するまでに問題が生じた場合、この内容に沿ってことが進みます。難しい言葉と漢字がたくさん並んでいるように感じますが、最も重要な注意点を記載しているので、ぜひ一読しておきましょう。
○工事請負契約締結時の注意点
工事請負契約書には、住宅の内容や工事の進行計画、建物の仕様など、一戸建て住宅の着工から完成に至るまでの一連の内容を記載しています。また、瑕疵担保責任は、民法でも定めがありますが、法規を守っていれば約款によって特約を付すこともできます。責任期間と合わせて注意してみておきたい点です。
●具体的な注意点
・着工日と竣工予定日・契約日
実際にいつから工事に取り掛かるのか。契約内容のスタートともいえる日になります。工事着手後に問題が生じた場合の基準点となる日ですので、再確認しておくべきでしょう。
・契約金額に含まれている工事内容
設計図やトレースを契約までに何度も見ては、プランを吟味して本契約を締結することになるでしょう。最終決定案を固めて、今回の契約がどこまでの建築を行うものかということを改めて確認しておかねばなりません。プランや仕様を検討している間に変更となったものや、追加した設備がきちんと見積もりに入っているか。また、門塀や外構・植栽は含まれるか。を注意してみるようにしましょう。外構工事を別途依頼する場合は、その請負契約締結時も同様の注意点を確認しておきましょう。
・工事金額およびその支払方法と期限
契約で重要な工事費用の支払いについては、最も慎重に確認をしたい注意点です。建物がいつ完成して、工事代金がいくらになって、それを何回に分けて支払うのか。ここはしっかりと確認しましょう。
支払時期はおおむね、契約時・上棟時・完成引き渡し時の3回に分けて支払をするパターンが多いですが、その際の割合もきちんと押さえておきましょう。そして、住宅ローン申請をするなら、ローン不成立の場合の特約があるかも、合わせて確認しておきます。
工事請負契約には、一戸建て住宅が完成するまでのあらゆる決め事を書面化しています。注意点ばかりになりますが、押印する前にきちんと目を通し、不明な点、わからない言葉などは尋ねて理解したうえで契約書に判を押しましょう。
【著 者 長 岡 利 和】