今回は、住宅をプライベートスペースとしてではなく、会社や事業の一部または全部として使用している建物としてみた場合のお話です。
ここ数年、専業主婦が自宅の一部を開放してカフェを営んだり、趣味や教養の教室をしたりという話をよく聞きませんか。
自宅の一部を事業として使用する場合や、中古住宅を独立起業して活動する場として購入したときは、事業スペースとして申告することができます。
これは、法人なりか、個人事業かという別を問わず、事業収益や経費が発生するために確定申告をする人全てに共通します。税務署で開業届けをした人は、年に一度の確定申告が必須ですから、その時に建物の使用からどれだけの経費を計上できるかということです。
○事業用建物の固定資産税
始めに例を挙げたように、自宅の一部を事業用として使用している場合は、まずその割合をきちんと「居住スペースと事業スペース」に分けて計算する必要があります。確定申告のときはもちろんですが、日常使っている間も、プライベートと仕事はきっちりと按分する、またはそれぞれに目で見て判るように(メーターや使用量を)分けておかねばなりません。
一戸を事業用空間として購入した場合は、その全ての固定資産税は経費扱いになります。経費=損金勘定に組み入れるという意味ですが、経費といえば実際に払ったときに計上するのがセオリー。しかし、固定資産税は年度縛り(年をまたいで請求)されますよね。
事業によっては決算月を設けているかもしれませんが、事業年度が1月から始まるというところも多いでしょう。その時、どのタイミングで固定資産税の損金算入をすればいいのでしょうか。
○固定資産税を損金に立てるタイミングは
固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に対して課税されます。しかし、その納付ができるのは実際には4月以降。このタイムラグによって、本当なら通年分の固定資産税を経費として計上(損金)に立てたいのに、払ってないからできないのでは?と思われがちです。
●固定資産税納付書が届いたらすぐに損金算入
事業用の経費は、一年間にかかった(またかかるべき)経費をその年に計上して、年間の収支を確定させます。先に支払う予定でまだ支払えていない経費(同様に回収できていない売り上げ)も、年間の収支に加えなければなりません。
本来なら、売り上げがあったとき・経費を支払ったときに帳簿をつけて、売り上げと経費損金を管理しますが、固定資産税はその支払いが確定したときではなく、納付書が届いてからすぐに損金算入してしまうのがよいでしょう。これなら、年間にかかるべき租税公課(税金や収入印紙などを示す科目)として忘れずに経費計上することができます。
実際に支払う予定が先の場合は、「未払い金」として損金算入します。払った分だけ、租税公課と逆の経理処理(逆仕訳)をすればいいのです。
注意しなければいけないのは、事業初年度から行っている経理の方法を変えないこと。税法上「継続の原則」というのがあり、年度によって方法をころころと変えるのは、健全な経理ではありません。
一年分を始めに損金として立てるか、または年度決算処理で最後にまとめて行うかなど、方法はいろいろありますので、依頼している税理士さんや専門の知識がある人に相談して、明瞭会計を行いましょう。
【著 者 長 岡 利 和】